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月が出ていた。細く鋭い月が、空に刺さるようにして浮かんでいた。
ゆっくりと通い慣れた道を歩く。学校から家までは20分ほどだ。僕はこの20分がわりと気に入っている。とくに1人での帰り道を。
心地よい風を受けながら空を見上げる。気分がいい。部活で疲れていたが、それすらもどこかにいってしまいそうだ。
左手には、川が静かに流れている。日の沈んでしまった今では、黒々としているが、夕焼けに照らされた川面が、キラキラ輝いてとても美しいことを僕は知っている。
「っと」
カバンをしっかりと抱え直す。空を見ているうちにボーッとしていたらしい。
「腹も減ったし、さっさと帰るか」
つぶやいて進行方向に目をやると、道の脇に黒い影がわだかまっていた。
よくよく見れば、人が座りこんでいるようだ。具合でも悪いのか、じっと下を向いている。
早足でそばに行くと、同じ年頃の(学生服を着ていた!)少年だった。
「どうかした? 体調でも悪いのか?」
声をかけて手を伸ばすと、
「ああ、ありがとう。大丈夫だよ」
色白の顔がはじめて上を向く。大丈夫と言うが、顔色は悪い。
「立てるか?手を貸すよ」
言いながら彼の腕を取った。
「悪いね」
彼は立ち上がると笑顔を向けた。
僕より少し背が低い。病弱なのか、体も華奢な感じだ。 腕を放すと、僕は自分の手を見た。
「ごめん。僕が濡れていたから。これでも少しは乾いてきたところだったんだけど」
彼の制服は湿っていたし、なんだか冷たかったのだ。
「なんで、、、。そこの川で溺れたってわけじゃないだろ?」
指で川を指しながら訊いた。初夏とはいえあんな川で、しかも制服のまま泳ぐとも思えない。
「えぇと、、、溺れたというより、溺れさせられた、、、かな」
ぎこちない微笑を浮かべたまま彼は答えた。
「、、、、、、、」
不審な顔をしていたのだろう。
彼はたどたどしく話し始めた。
「説明するには、まず昔の話から始めなきゃならないんだ、、、けど、、、」
「僕は小さい頃、ここよりもずっと田舎の方に住んでいたんだ、、、 |
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